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電子本棚サービス「ブクログ」

ウェブ上では家具ですら“メディア化”する

 村上龍氏が講談社の「群像」で連載していた長編小説『歌うクジラ』が、出版社を通さずiPadアプリとしてリリースされた。文中には美しいアートワークが織り込まれ、坂本龍一氏書き下ろしの荘厳な音楽まで付いている。読み終わると映画のようにエンドロールが流れるあたり、いよいよ既存の小説を抜け出したなと感じる。

電子書籍の品質の向上とともにその市場規模が拡大していけば、今度はより多くの人が“電子本棚”を必要とするだろう。電子本棚とは本来的に「デジタル化されたコンテンツ(商品)」を整理するために使われる。またそれを公開することで個々人の趣味趣向をウェブ上に反映させることができるのだ。本棚を自らの人格の反映と捉えるならば、もはやそれはただの整理道具ではなく、立派な“メディア”と言えるだろう。

電子本棚の代表的なサイトは、GMO傘下のペーパーボーイ社が行う「ブクログ」である。このサイトでは、ユーザー一人ひとりが自分の本棚を持ち、ツイッターのように他人(の本棚)をフォローすることができる。人の本棚を覗き見するのは、実際にやってみるとかなり楽しい。この人はこんな風な傾向があるのか。こんな音楽を聴いているのか。この人の観た映画を自分も観てみよう。そう思い、アイコンをクリックするとアマゾンに飛ぶ。そこで購入するとアフィリエイトフィー(紹介手数料)がその本棚の主に入る仕組みとなっている。

 一般的に電子書籍などは衰退する出版業界の原因と考えられがちだが、同社社長の吉田健吾氏は「このサービスは紙媒体の売上に貢献することもできる」と述べる。確かにブクログのように“横のつながり”で購買意欲を刺激する方法は、書店のラインアップから外れて埋もれいってしまう出版物を掘り起こすには最良の方法であろう。また、どのような傾向を持つ人が書籍を購入しているか、一目でわかるというマーケティング効果もある。以前の業界の常識に固執しない出版社は、すでに同社とのビジネスを始めているようだ。“ウェブサービスが既存の産業をプロモーションする”代表的な例と言えるだろう。

単語紹介:

ブクログ

Web本棚サービス。GMOインターネットグループが蔵書管理サービスとして開発したものをペーパーボーイが引き継ぎ、現在の形に。ISBNコードで書籍を登録、そのほかCDやDVDなどを本棚に並べることが出来る。8月現在のユーザー数は30万人弱。http://booklog.jp/

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