最近の国内空港民営化に関するリサーチ

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■題名題名題名題名

日本の空港民営化の枠組みは、2013年施行の「民活空港運営法」に基づいている。国管理の空港において、従来は着陸料などの使用料は国によって決められ、滑走路は国、空港ビルは地元自治体出資の第3セクターなどの民間企業が所有してきた。

 

しかし、民営化後は民間企業がこれらを一体で運営し、着陸料も自由に決めることができるようになった。つまり滑走路などの所有権は国に残し、運営権を民間会社に与えるコンセッション方式が採られているということになる。

 

このように空港民営化に向けた動きの中で、2016年4月に関西国際空港・伊丹空港、2016年7月に仙台空港が民営化されたのに続いて、国が公表する民営化プロセスが進められている空港としては高松空港、富士山静岡空港、福岡空港、新千歳空港、熊本空港、神戸空港、広島空港などが挙げられる。

国管理空港の収支は滑走路、誘導路、エプロン(駐機場)など空港の基本施設を管理運営する「航空系事業」と、空港ターミナルビルや駐車場などの空港関連施設を管理運営する「非航空系事業」に分けられるが、航空系事業に比べて非航空系事業の方が経営の自由度が高く、利用者の動向などに収支が影響されやすくなっている。

 

実際に、近年は訪日外国人旅行者数の大幅な伸びなどにより航空系事業、非航空系事業共に営業収益・売上も伸び、それに伴ってEBITDA*も拡大しているが、その傾向は非航空系事業においてより顕著であると言える。

 

■題名題名題名題名

それぞれの国管理空港の収支に目を向けてみると、修士の内容は空港ごとに大きく異なる。国管理の26空港のうち、21空港では航空系事業がEBITDAベースで赤字となっており、8空港では空港全体の収支が赤字となっている一方で非航空系事業は全空港で黒字となっている。航空系事業の収支が悪化している原因としては、

 

・日本の国管理空港は単年度予算の空港整備勘定というプール制の中で一括して整備・維持運営されてきた。

・航空系事業は国が土地や施設を所有・運営する一方で、非航空系事業は民間企業が運営し、経営が空港単位で一体化していなかった。

 

以上二点が挙げられる。そこで、使用料などを国が決めているため経営の自由度が低く、一方で国全体の収支として評価をされているため経営努力へのインセンティブが低いことが指摘されている。

そこで、空港民営化によって使用料などを空港管理会社が設定できるようになり、経営の自由度が高まるとともに経営努力へのインセンティブが生まれ、非航空系事業と共に空港として一体化した経営がなされることが期待されている。空港民営化は世界的な潮流でもあり、海外では成功例も多いことから、日本においても空港民営化による空港経営の健全化が望まれる。

 

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外資系企業の動向として、まずヴァンシ・エアポートの関西エアポート運営参画に注目する。ヴァンシ・エアポートは、2014年時点でフランスの11空港、ポルトガルの10空港(乗客数1,800万人のリスボン・ハブを含む)、カンボジアの3空港からなる、24空港の開発・運営を管理しており開発・運営を管理する空港には100社を超える航空会社が就航し、2014年の年間乗客数は4,670万人で、売上高は7億ユーロを超えている。また従業員数は約5,000人であり、空港の開発・資金調達・建設・運営にあたっている。2016年3月末に新関西空港(NKIAC)が行っていた空港運営業務が、オリックスグループおよび仏空港運営企業ヴァンシ・エアポートを中核とする新会社(関西エアポート、下図の本コンソーシアム)に移管された。ここで、ヴァンシ・エアポートの関西国際空港と伊丹空港の経営における役割としては以下の内容が期待される。

 

・関西国際空港と伊丹空港は、民営化後は空港稼働の向上、LCC誘致のための第3ターミナル建築、ブランド品販売などによる商業エリアの充実、関連会社の整理統合、土地の利活用による経営の効率化。

・日本の会社には航空系事業と非航空系事業の一体経営の経験は乏しいが、ヴァンシ・エアポートは海外において空港経営の経験が豊富であるため、そのノウハウの活用。

その他にも空港民営化において外資系企業の動きは見られる。関西エアポートの運営に関して、関西国際空港及び大阪国際空港特定空港運営審査の結果、コンソーシアムの代表企業審査通過者はいずれも国内大手金融・不動産・商社など、空港オペレーター側は欧州、アジアを中心とした外国企業が審査を通過した。本事例では「年間旅客数1,500万人以上の国際空港を運営する能力を有すると認められること」が空港オペレーターの資格要件に含まれたが、今後も別の空港にて類似の条件が課される可能性があり、海外において大規模国際空港運営経験のある外資系企業が有利となる場合がある。

2016年7月には仙台空港が民営化し、豪大手金融グループMacquarie Capital Group傘下のマッコーリー・キャピタル・セキュリティーズ・ジャパン・リミテッドがファイナンシャルアドバイザーを務め、東急電鉄を代表企業とする東急前田豊通グループが運営権を獲得した。二次審査(最終)では、三菱地所を代表企業とし、空港運営の経験が豊富であり、地元企業も構成員に入っていたMJTsは次点にとどまった。東急前田豊通グループの構成員である前田建設は愛知県有料道路運営の優先交渉権を獲得するなどコンセッションに強い点が評価され、またMJTsの構成員であるANAホールディングスがLCC誘致の妨げになることが懸念された。外資系企業がパートナーを選定する際には、利害相反、空港運営以外の道路運営での実績も考慮すべきと考えられる。

 

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今後民営化される空港として福岡空港や新千歳空港などの北海道の道内空港を動向にに注目したい。福岡空港民営化後の運営権者の公募にかかる動きは既に始まっており、2018年5月には優先交渉者が決定し、2019年4月には空港運営事業が開始される見込みである。

運営権獲得に向けては、西鉄のほか、九州電力やJR九州などが積極的な姿勢を見せているが、西鉄は県外資本との連携の可能性に言及しており、「空港が良くなるノウハウ」を持つ外資系企業との連携も視野に入れている。新千歳空港などの北海道の道内空港の民営化は、複数空港の一括民営化であり民営化対象空港の格差が大きいという点で他の空港の民営化とは異なっており、海外における複数空港の運営経験や格差の大きな空港の運営における空港活性化の実績がある場合は、入札時に有利になると考えられる。

■題名題名題名題名

以上を踏まえ、空港民営化事業参画の留意点を国内事例をもとに考えたい。海外ではすでに空港一体経営での成功事例があり、その経験は日本の空港民営化後の空港経営において必要とされていることが分かる。また空港民営化における入札には複数企業がコンソーシアムを組むことが一般的であり、外資系企業にとってはコンソーシアムを一緒に組むパートナー企業の選定が重要になる。

 

パートナー企業には現地における情報収集や日本の文化や習慣への理解を求め、外資系企業は海外での空港運営のノウハウを生かす一方で、日本の空港の実績を生かす取り組みが必要である。次に外資系企業の優位性を確認する。日本企業にはない経験を持っている外資系企業にとっては、民営化は大きな事業機会となる。

 

空港運営に限らず、広くコンセッション方式の経験がある場合は、空港運営にその経験を活かせると考えられる。多数の空港を運営しているなど特に規模の大きな企業であれば、免税店の運営で重要になる調達力において優位性があると考えられ、また複数の国で空港運営の経験を持っている場合は、異文化への対応において、外国での経験を展開できる部分とそうではない部分を見分ける能力があるという意味で優位となる。

 

一方で外資系企業にとっての留意点も考えたい。外国企業は空港運営能力や経験がある反面、タイムリーに現地情報を収集することが困難であるため、公開情報の確認、マーケットサウンディングや地元の経済団体の会合への参加や、情報収集能力に優れた地元の企業など、外資系企業が持っていない能力を持つパートナー企業を見つけることが重要となる。

 

空港運営の経験は望ましい半面、航空会社がコンソーシアムに入ることはその他の航空会社の誘致の妨げとなると判断される可能性もあり、パートナーが持っている利害関係には留意すべきである。World Airport Awardsで総合ランキング上位に羽田空港と関西空港が入り、その他複数部門において日本の空港が1位を獲得するなど日本の空港は顧客から高い評価を受けており、外資系企業が海外での取り組みを日本に取り入れる際には日本の空港の実績を生かした顧客満足度の維持向上に努める必要があり日本の空港の実績への理解と尊重も忘れてはいけない。例えば、出発便のゲートを直前まで表示しないようにすることにより顧客に施設内の回遊を促して消費を喚起するのは海外で採用されている手法であり、関西エアポートの運営に参画したヴァンシ・エアポートも空港関係者に提案をしたが、そのような手法が日本の顧客にどのように評価されるかは未知数である。海外事例分析からも空港民営化事業参画の留意点を考えたい。民営化後の空港経営においては、地元や周辺の環境に応じた経営が求められるが、乗降客数の拡大とそれによる非航空系事業の拡大が主流となっている。そして乗降客数の拡大のための施策としては、着陸料や施設利用料を抑えて航空会社の負担を軽減することにより、LCCを中心とした空港会社を誘致する手法が主流となっている。但し、空港の地理的位置、大都市へのアクセス、周辺にどのような空港があるかなど様々な要素を考慮する必要があり、非現実的な事業計画により民営化が失敗した例もある。空港運営には空港運営会社のみならず、金融関連企業なども参画して知見を蓄積しているのである。成功事例としては、イギリスのヒースロー空港など7空港では1987年に「空港機能の向上、環境対策、安全性確保とともに民間資本の導入による空港の企業性、効率性の向上」を基本方針として民営化され、着陸料の引き下げなどを行った結果、非航空系事業が大幅に拡大した。イギリスのバーミンガム空港では1997年に民営化された当初は自治体や空港運営会社などが株主となっていったが、その後はMacquarie Airports Groupを含む金融関連企業の出資割合が拡大しており、民営化後は乗降客数を拡大させる一方で非航空系事業からの収入が航空系事業からの収入を上回るようになり、財務状況も改善した。地方空港でありながら世界40ヶ国に100都市を超える就航都市を持っている。オーストラリアのゴールドコースト空港は1998年の民営化以降、LCCの誘致に積極的に取り組み、乗降客数を伸ばすとともに非航空系事業の拡大により財務状況を改善した。それらの取り組みの中では、航空会社出身者の採用、航空会社へのアンケート実施によるニーズの把握など、空港利用者の視点を重視している。一方でアルゼンチンの33空港では1998年に33空港を一括して30年間のコンセッションで事業権を売り出し、ミラノ空港会社を含む企業連合が空港収入の36.9倍で落札したものの、過大な需要予測に基づく高額落札による弊害が顕在化し、民営化後に景気も低迷したため業績が悪化し、コンセッション契約違反で政府と法定論争になるという失敗事例も確認されている。

 

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